「光庭の長屋」
【German Design Award 2023 Nominee】
【Archilovers Best Project 2022】
世田谷の閑静な住宅街に光庭を持つ木造3階建の母と娘家族の二世帯住宅です。隣家に囲まれているため、接道する北側に光と風を導く奥に深い庭(光庭)を設けました。その庭を巡るようにそれぞれの住居を配置し、大きな窓を通して互いの気配が感じられる住まいとしました。光庭を開くことでまちとつながり、共有することで家族を結ぶ長屋の計画です。
敷地は北側以外隣家に囲まれているため、建蔽率60%の余剰を北側中央に道へ繋がる奥行5mの光庭に集中させ、光庭を巡るように2つの家族のリビングやテラスを大きな開口と共に配置しました。1階は母、2~3階は娘家族としてそれぞれが独立性を保ちつつ風や光を共有しながら木々越しに互いを見守る構成です。奥に深い光庭は延焼ラインから外れ、曲面硝子や木アルミ複合サッシを用いながら柔らかい内部空間の広がりをつくります。木のぬくもりを感じる空間にするため、光庭を活かして隣地の開口制限を重視した準延焼防止建築物として空間を圧迫せず木架構の現しや木製階段を可能にしました。陽の光の角度と外壁の斜貼りタイルは呼応し、季節の移り変わりを知らせてくれます。曲面を構成する砂状塗装は自然の岩肌のような表情に。お施主様のお母様は紙で作るペーパーフラワーアート教室を定期的に開き、1階は光庭に面してギャラリーのように使われ、光庭はまちの顔となり小美術館のような佇まいとなった。
以下architecturephoto®編集長 後藤連平様、編集スタッフ酒井克弥様よりコメント
この度は、興味深い作品を誠にありがとうございました。
大胆である種の“建築的”な空間構成と、お施主さんの趣向が反映されたような内装のデザインが、良い意味で対比的に共存しているところを興味深く拝見しました。
その空間の在り方は、何かグラデーションの中でクライアントのとっての“最適な色合い”を探すような繊細なやり取りがあるように思い、本作品には、それを見る方にも求める奥深さがあるようにも思います。
ファサードの素材の組み合わせも、目を凝らしてこそ分かる面白さが込められていますし、この辺りの設計におけるバランス感覚が、髙橋さんの個性だとも思いました。
振り切ることで分かりやすさは生まれますが、振り切らない中にある素晴らしさも、弊サイトは伝えられるメディアでありたいと常々思っています。
(アーキテクチャーフォト編集長 後藤連平 )
素敵な作品をありがとうございます!
住宅の中心につくられた「光庭」は広い空間ではないですが、単なる空地ではなく確かに庭だという感覚を強く持ちました。
緑をはじめ門やテラスといった構成要素が揃っていることや、
ときにアプローチとなり、ときに住戸同士に適切な距離を生み出すなど、多様な役割を担っていることもありますが、
なにより太陽が意識される空間としてつくられていることが、その大きな理由であるように想像し興味深く拝見しました。
(アーキテクチャーフォト編集スタッフ 酒井克弥)
data
所在地 :東京都世田谷区
用途 :長屋(2戸)
構造 :木造3階建て
延床面積:114.86m2
竣工 :2021.04
構造設計:川村構造設計室
施工 :栄伸建設
写真 :中村 絵
選出 :German Design Award 2023 Nominee
掲載 :ArchDaily